『予期せぬ来訪者』木村二郎

  • 著: 木村 二郎
  • 販売元/出版社: 東京創元社
  • 発売日: 2011/11/29

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第一作の「ヴェニスを見て死ね」が物語が始まってすぐに、主人公ヴェニスが事務所にいるところで拳銃で撃たれるという派手な場面から始まったので、一つの話が終わり次の話に移っても、今回もそういう派手な事件が起こるのだろうと思ってしまうのだが、基本的に私立探偵が扱うものといえば人捜しで、このシリーズも主人公が請け負うのは人捜しで、地味なのだ。
しかし地味な人捜しだからといって、ここで語られる事件は単純な人捜しではなく意外な犯人だったり意外な真相だったりと、ミステリ的な意外性が仕込まれており、飽きさせずに、時としてずしりと来る人生の重さというか取り返しの付かない人生の過ちが繰り返し描かれる。それでいて過度に感傷的にさせず、ある種の軽さを維持させているところが上手いところだ。人によってはその点が物足りなさと感じるかも知れないけれども、事件と主人公との距離感がちょうどいいのだ。
前巻で起きたとある事件で知り合った恋人との関係も微妙に変化していく感じもまた心地良いし、今回の文庫化にあたって書き下ろしされた短い、幕間ともいえるエピソードが、作者は甘ったるいと書いているけれども、ちょうどいい場所に収められていて、近い将来に三冊目が出ることを期待せずに入られない。

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