僕は銀背の世代ではなかったので、それほど思い入れは無いのだけれども、銀背の本は何時の日か文庫化されるだろうと思い続けて、未だに文庫化されない本が何冊もあることに対しては不満という思い入れが沢山ある。
<新☆ハヤカワ・SF・シリーズ>を立ち上げるのであれば、<ハヤカワ・SF・シリーズ>の中の文庫化されないままでいる方を何とかして欲しいと言いたいけれども、まあ面白いSFを読むことが出来れば文句は言いまい。
スコット・ウエスターフェルドは知らない作家で、過去の翻訳作品をみても、それほど食指は動かされなかったのだが、何しろ第一回配本なのだから、それほど期待せずに読んでみることとしたら、これが期待以上に面白かったので驚いた。
巻頭の地図からしてなかなかやるなあと思わせる凝り方で眺めていてうれしくなるし、挿絵も悪くない。
主人公達の造形も良くできているし、凝った設定でありながら、延々と設定だけを書き連ねて話が全然進まないなどということもなく、テンポよく話が進む。
二人の主人公の視点で進むので世界情勢や主人公達と敵対する側がどのようになっているのか見えてこないのだが、そういう部分も含めて由緒正しき冒険小説って感じで、読んでいてワクワクさせられる。
フィリップ・リーヴの『移動都市』シリーズとちょっと感じが似ていないでもないが、あちらほど人物造形や設定がひねくれていないのだが、物足りないとは思わせないところがうまいところだね。
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