最初にガラクタを纏った公爵が登場する。
いやガラクタを纏ったというよりもガラクタでできていると言った方が正しい。
そして、公爵が歩くたびに身につけているガラクタが道に落ちていく。
その他、偽詩人やら、書物を食い尽くす巨大な紙魚やら、塔に住む塔男などが登場する。
まるで山尾悠子の世界を彷彿させる世界なのだが、あくまで霞のごとく彷彿させる程度で、どちらかといえばむしろ村上春樹の世界に近い感じがする。
個々のガジェットはなかなか面白く素晴らしい。特に公爵の存在と彼の扱われ方は面白い。
ガラクタでできた公爵は定期的に技師によって分解され、個々の部品を掃除される。分解掃除する技師達はみな老婆、掃除後、公爵を組み立てた後に、使われなかった部品が転がり落ちていても全然気にしないどころか、組み立て設計図すら見ずに組み立てる。そして、掃除の時に交換となった部品を集めて、密かに再生公爵を作っていたりする始末だ。
ただ、細部のイメージが面白いのに対して、物語全体がその面白さを受け止めきれているのかというと、どうも怪しい気がする。
単に僕の好みの問題に過ぎないかもしれないけれども、読み終えてもなんだかもやもやとした物が残り続けている。再読すればわかるようになるのかも知れないけれども、作者の新しい作品を読んだ方がはっきりするかもしれない。
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