そもそも、目次からして作者の意気込みのような物を感じてしまう。たんなる言葉遊びだろうけれども、こんな遊びをやられてしまうと否が応でもワクワクしてしまうし、そのワクワク感をしっかりと受け止める物語でもあるので安心して読むことが出来る。
現実には存在しない架空の国。作者は主人公を活躍させるためでもなく、主人公を暴れさせるためでもなく、ただ、主人公を生きさせるために架空の国を作り架空の政治体系を作り、そんな世界に主人公を放り投げて物語を語った。
そして主人公はそんな作者の思いを受けながら、自分の信じる道を突き進んでいく。
そんな感じの物語だった。
荒廃した国の中、自分の信じた正義のために突き進みながらも、そのためなら普通ならばそんなところで嘘などつかないだろうと思うところでも平然と嘘もつく。そんな主人公の造形も良いのだが、主人公の父親の造形が素晴らしい。
この物語にそんな人物を登場させるかと思うような人物なのだ。そして作者は最後の最後になって、主人公の父親がどんな人物だったのかを登場人物の一人に語らせるのだ。
今まで文庫化されなかったのが不思議なくらいに面白い物語だった。
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