『海辺へ行く道 そしてまた、夏』三好銀

  • 著: 三好 銀
  • 販売元/出版社: エンターブレイン
  • 発売日: 2012/1/25

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素敵な悪夢も、いつか、終わる。
ということで、いつ果てるともわからぬ物語も今回で終わる。
あちらこちらで、曰くありげにちりばめられた、さまざまな謎は何一つ明確に明らかにされることなく終わってしまった。
夏から始まり、冬を経て、そしてまた夏が訪れ、一年という年月が経過した。
三好銀がこの漫画で描く、まるで書割りのような無機質な町並み、それはある意味、書割りの後ろにはまったく異なる世界が広がっているかのような、つまり表層的な物語の背後に見え隠れする不穏な出来事は書割りの世界の裏の世界であり、三好銀は最初からすべてを明らかにするつもりなど無いのだ。
物語は夏となっているのに本じたいは冬に出るところがまた、この物語の不思議さというか、いややはり悪夢といったほうがいいだろうけれども、真冬に見る真夏の悪夢であり、延々と続いてほしい反面、何一つ明らかにされないまま続くくらいならば、この辺で終わってくれたほうがいいのだろう。
つくづく、漫画の持つ表現力の奥深さというものを感じさせてくれた本だった。

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