発売予定に上がっていたときには気になっていたのだけれども、発売日が伸びて、それからしばらく音沙汰なしになって、そのまま忘れてしまっていたので、いつの間にか出ていたことを知ったときには驚いた。
ハワード・エンゲルの作品は過去にハヤカワ・ミステリ文庫からベニー・クーパーマンシリーズ三冊ばかり翻訳されていたのだが、それほど売れなかったみたいでそれっきりになってしまっていた。
が、本国カナダではずっと書きつないでいたようで、今回の作品もなんと作者のシリーズ探偵であるベニー・クーパーマン物だった。
作者自身が、文章を書くことはできるのに読むことができないという失読症に罹ってしまったという、作家としては致命的な状況でありながらも、こうして一冊の、しかもミステリ小説を書き上げてしまったということは凄いことだが、シリーズ探偵自身にも同じ目にあわせて、そして事件を解決させてしまうというのは、作家というのはなんとも因果な商売だと思わざるを得ない。
ただ、失読症で記憶障害、つまり、読めない、記憶できないという障害にも悩まされる探偵が事件を捜査するという設定は面白いのだが、その状況下でいかに事件解決へと向かうのかというミステリ的な期待に関しては少しばかり残念な形で終わる。
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