矢作俊彦と司城志朗のコンビが四半世紀ぶりに帰ってきた。
矢作俊彦と司城志朗の二人は『暗闇にノーサイド』、『ブロードウェイの戦車』、『海から来たサムライ』とむちゃくちゃ面白い冒険小説を書いておきながら、この三作で終わりとなり、それ以降は個々で単独の作品を書くようになってしまった。そのおかげで単独になってしまったら面白さは半減してしまったんじゃないかと勝手に思い込んでしまい、長いこと矢作俊彦と司城志朗の単独作品は読まずにきてしまった。実際はそんなことはなかったんだけれども、それでもコンビによる三作のようなタイプの作品は書かれてはいない。
再びコンビを組んで書いたということで、むちゃくちゃ面白い冒険小説を期待したのだが、実際に読んでみるとぜんぜん違った。
沖縄を舞台に、沖縄の方言でしゃべる地元やくざの抗争を描いたノワール小説だったのだ。
文庫の帯にも書かれているように、共感できる登場人物など一人も登場しないし、冒険小説の爽快感もまったく無い。そりゃ、ノワールだから無いのは当たり前なんだけれども、沖縄の言葉でしゃべるやくざの会話は緊迫した状況下でありながらものんびりとした感じであり、共感できる人物が一人も登場しないくせにどの人物も個性が際立っていて、ねっとりとした濃厚さが漂ってくる。それでいてラストは不思議と後味が良いのがしゃれているというかなんというか。良くも悪くも期待を裏切られた一冊だ。
コメント