「添木田蓮と楓は事故で母を失い、継父と三人で暮らしている。溝田辰也と圭介の兄弟は、母に続いて父を亡くし、継母とささやかな生活を送る。蓮は継父の殺害計画を立てた。あの男は、妹を酷い目に合わせたから。」
紹介文だけ読むと、なんだか気がめいってくるような話だ。
もっとも殺害計画が途中でトップし、予想も付かない展開になるというのであればまだ読んでみようかという気持ちもわいてくるのだが、添木田蓮が殺そうとした継父はそのまま殺されてしまう。
どう考えても救いの無い話にしかなりようがないし、そりゃあまあ、『カラスの親指』を読んだときには、
「目的の為であれば登場人物を平気で不幸な情況に陥れてしまうような突き放した話を書いて欲しいと思う」
などと書いたけれども、あれは物語の結末でそういう展開になってほしいという意味であって、最初からそういう展開をしてほしいという意味ではない。
そもそも、題名どおり、作中では雨が降り続いている。いや、必ずしも降り続いているというわけではないのだが、読んでいる最中はなんだかじめじめした湿気を感じるのだ。
が、しかし、文庫の帯に書かれていた「道尾秀介は、決してあなたを裏切らない」という言葉は本当だった。
まあ、予想外の展開をするという意味では裏切っているが、最初の印象から受けるような話にはならなかった。
すべてを明らかにするのではなく、暗示程度におさえたままで終わる結末が、それまで物語り全体を覆っていたじめじめとした雰囲気を振り払って雨上がりの空気感を呼び起こしている。
この余韻はなかなかいいなあ。
コメント