こうして<ピアピア動画>シリーズをまとめて読んでみると、チャールズ・ストロスやコリイ・ドクトロウの諸作品と同じ雰囲気の世界感を持つ話だったことがよくわかる。
現時点での技術の延長線の上に起こりうる技術革新が起こった世界を、ビジネスとか起業とかそういったことにおける成功という問題をほとんど無視して、面白いか面白くないか、楽しいか楽しくないかという基準だけで突き進んでいく人たちを主人公にして描いた物語だ。
主人公たちを突き動かす駆動力となる考え方がそんな現実から少し離れた地点にあるので、そこからの展開が多少たりともご都合主義的な面があっても気にならない。欠点となる部分にはまったく触れず、長所となる部分だけで組み合わせた作品なのだ。
それはなによりも、作中で登場する初音ミクをモデルとしたヴァーチャルアイドルの名前に小隅レイという名前をつけていることからして決定的だ。
SFファンならばこの名前の由来はすぐにわかるだろう。すべての話が小隅レイを根底として広がっていて、その広がっていく物語はライトではあるけれどもハードSFなのだ。
現実の世界におけるSFファンダムの世界が小隅黎を中心としてわくわくする世界となっていったように、物語の世界においても小隅レイを中心にして、わくわくするような物語が展開される。
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