新刊が出るたびにむさぼるように読んでいた桜庭一樹の小説を読まなくなって久しい。
桜庭一樹の小説がつまらなくなったというわけでもないのだが、なんだか読みたいという気力がわかなくなってしまったのだ。
憑き物が落ちたというと作者に失礼にあたるだろうけれど、そういう感じかもしれない。レイ・ブラッドベリのときもそんな感じだった。
だぶん、『荒野の恋』の第三部がああいう形で出たというのが大元の元凶でもある。
タカハシマコの漫画を読むようになったのはそれとちょうど入れ替わる形にでもある。つまり僕にとっては桜庭一樹とタカハシマコは互換性があったのだ。
タカハシマコが『青年のための読書クラブ』をコミック化したとき、それは僕にとってごく自然な組み合わせであって何の違和感も無かった。
とはいうものの、タカハシマコが桜庭一樹の代わりになってほしいのかといえば、そんな風になってほしいわけでもなく、タカハシマコはタカハシマコの世界を描いてほしいと思っているのだが、とうとう、タカハシマコは『荒野の恋』のコミック化を始めてしまった。
僕が『荒野の恋』が好きだったのは、鎌倉が舞台となっていたというのが大きな理由のひとつである。
もちろん、『荒野の恋』の中で、鎌倉という場所が大きく描かれているのかといえばそれほど大きく描かれているわけではない。でも、そこは文字の世界だ。書かれていない部分を補足して読むことができる。
しかし、漫画となると違ってくる。描かれたものがすべてで、描かれていないものは補足しにくい。
もともとタカハシマコは物語の背景となる土地を必要としない作家だ。どこまで鎌倉という土地を描いてくれるのか不安だったのだが、実際に読んでみると不安は的中してしまった。
まあ、しかし、タカハシマコが原作に忠実にコミック化するのかそれとも自分の世界を投入してくるのか、僕が望んでいたような『荒野の恋 第三部』をどう描いてくれるのか不安と期待を交えて続きを待つことにしよう。
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