一部の人には熱狂的なまでに評価の高い岸大武郎なのだが、実は僕はあまり好きではない。
『恐竜大紀行』も週間少年ジャンプで連載していたときにリアルタイムで読んでいたのだが、あの当時、面白いとは思わなかった。
恐竜が人間と同じ思考をするという時点でそれを受け付けることができなかったのだ。
というわけで、僕自身、一般的で標準的な読者にすぎなかった。
その後、南方熊楠を主人公にした『てんぎゃん』を連載するも、今ひとつ、というかそれ以上に地味すぎた。
その後に南方熊楠ブームが起こったことを思うと、早すぎたとしか言いようが無いのだが、それ以降、岸大武郎はジャンプで連載することなく秋田書店へと移ってしまっい、僕自身はチャンピオンは読まなかったのでそれっきりとなってしまった。
それでも『恐竜大紀行』の評価が高いことは知っていたので、それを評価できない自分自身に対するもどかしさがずっと残ったままでいるのだった。
『錬命術』は一冊にまとめきれない短編を寄せ集めたものといった感じではあるけれども、それ故に岸大武郎のショーケース的な面もある。
大きく分けて「錬命術」「ジュリアの法則」「大恐竜記」。
どの作品も奇をてらったところがなく、ものすごく正統派でそれだけにヒットしそうも無い作品ばかりだ。しかし、「錬命術」の第四話における、遺伝子操作のためのDNAと人間との間の架け橋となる中間言語という概念などはちょっとわくわくさせられる。
読めば、確かに面白いのだ。ゆっくりとしたペースでもいいので、こうした良質なSF漫画をこれからも描いてほしいと思う。
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