僕は最初にあとがきを読むことにしている。
ある意味これは、ミステリで最初に解決部分を読んで犯人やトリックを知った上で読み始めるという行為に限りなく近いと思う。
最初にあとがきを読んでおくとなんとなく落ち着くのだ。
で、今回もあとがきを最初に読んだのだが、驚いてしまった。
『林真紅郎と五つの謎』、『蒼林堂古書店へようこそ』と読んでいたくせに、これらの小説の主人公がそれぞれ兄弟であるということにまったく気が付かなかったのだ。
林真紅郎が四男、蒼林堂古書店の店主が三男、そして今回の主人公が次男だったのである。
いずれ長男が主人公の物語が書かれるのかどうかはさておき、四兄弟でミステリというと舞城王太郎の<奈津川>サーガを思い出してしまう。ひょっとしてこれは乾くるみ版<奈津川>サーガなのかという考えもちらりと浮かんだけれども、たぶん違うだろうなあ。
今回は、あくまで謎の解体という部分にだけ焦点を当てて、謎が解体された時点でそのまま物語を閉じてしまっている。その結果、犯人や関係者たちのその後の余韻などないままに物語を閉じてしまうあたりが逆にもどかしさという余韻を残す結果となっている。
外連味こそは無いけれども、「五つのプレゼント」における二重推理や、「二枚舌の掛軸」や、「一巻の終わり」における消去法による推理。はたまた「一巻の終わり」でのメタミステリ的な趣向など、オーソドックスなミステリが堪能できる。
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