仕方の無いことだが、講談社文芸文庫は文庫本というわりには値段が高いのが悩ましい。
同時期に『ポケットの中のレワニワ』が講談社文庫として文庫化されたのだから、こちらも同じようにしてくれればいいのにと思ってしまう。
「さして重要でない一日」は、かつて講談社文庫として「パパの伝説」とのカップリングで文庫化されていたのだが、今回は「パパの伝説」が外れて、その代わりに「星の見えない夜」とのカップリングで再度、文庫化された。
前回のカップリングの理由に関しては、それほど理由らしい理由でもないのだけれども、作者による理由が書かれていて、「パパの伝説」から五年後に書かれた「さして重要でない一日」をカップリングすることによって両短編の間の歳月の隔たりのようなものを味わう意味があったが、今回のカップリングの方がより大きな意味を持っていて、その点では、今回のカップリングの方が本来の正しい形のようにも感じる。
最近の伊井直行は会社員小説という鉱脈を精力的に開発し続けている。「さして重要でない一日」と「星の見えない夜」はその原点ともいうべき小説で、会社員小説というものが面白いのかどうなのかよくわからない部分があるのだけれども、しかし、一方で北野勇作が『NOVA』という書き下ろしSFアンソロジーで会社でおかしなことが起きている短編を書いていることを思うと、会社員小説というのは書きようによっては面白い題材なのかもしれないし、両者ともオチの無いどこか不条理な展開をして、この手の奇妙な話が好きな身にとっては気になる存在なのだ。
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