この短編集を「奇妙な味」とひとくくりにして捉えてしまうと個々の短編において、だいぶバラツキが出てしまうと思う。
といってもそれは「奇妙な味」を意外なオチのある話として捉えてしまった場合のことであって、読み終えてみると作品が「奇妙な味」というよりも、こんな話を書く作者の方が「奇妙な味」と捉えたほうがしっくりとくる。
「マイロとおれ」は赤ん坊版『三毛猫ホームズ』という趣もあるけれども、刑事の相棒を赤ん坊にした理由というのがなんとも馬鹿らしくっていい。馬鹿らしいといえば「緑」の結末も馬鹿馬鹿しくって素敵だ。
買いものリストだけを並べた「買いもの」は異色な話だが、期待しすぎたせいか今ひとつ。猫の存在をさらにひとひねりできていたらよかったと思うが、買いものリストの作成者が最後のリストにニコチン・パッチを追加しているところがいいね。
異常な思考の持ち主が異常な行動をしながらも最後に、その異常な思考を最後に正常な行動として転化させている作品が多いのが特徴かな。異常な話なのに最後の部分だけ抜き出すとほのぼのとした良い話になっているのだ。
コメント