『おとぎ話の忘れ物』小川洋子・樋上公実子

  • 絵: 樋上 公実子
  • 著: 小川 洋子
  • 販売元/出版社: ポプラ社
  • 発売日: 2012/4/5

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樋上公実子のイラストに小川洋子が物語をつけたコラボレーションの一冊。
どこか不気味な感じのする樋上公実子のイラストにつけた小川洋子の物語もどこかというよりも完全に毒のある物語だった。
小川洋子がこういう毒を含んだ物語を書くというのは意外性もあったのだが、そもそも小川洋子の小説は二冊しか読んでいないので、もともとこういう系統の物語を書く人だったのかもしれない。だったらもっとこの人の小説を読んでみようかなという気持ちになった。
世界各地の街の駅にある忘れ物保管場所に保管されたままになっている「おとぎ話」の忘れ物を集めて「忘れ物図書室」というものを作ったという設定。プロローグでこの「忘れ物図書室」の成立の由来が語られるが、まあこれはそれほど重要なものではない。
その後に四編のおとぎ話が続くのだが、赤ずきん、アリス、人魚姫をモチーフに、最後の白鳥の話は何をモチーフにしているのかわからないのだが、おとぎ話の持つ残酷さというものがよくあらわされている。
残酷でありながらもその残酷さの元となる部分が人間のさまざまなおろかさから来るという点で、なんとなくだがA・E・コッパードの小説を彷彿させるような感じもした。
ただひとつ残念なのは小川洋子によって語られるおとぎ話がたった四編しかないことだ。小川洋子の手による残酷で少し毒のあるおとぎ話をもっと読んでみたくなる。

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