『イニシエーション・ラブ』に連なる同系統の作品。
文庫本を新刊で買うと帯がついていて、表紙の絵やデザインが凝ったものだった場合は帯をはずして表紙全体を見ることもあるのだが、それ以外の場合は帯をはずすこともないので、たまたま帯をはずしてみて驚いた。
帯に隠れた部分にタロット・カードの絵がついているではないか。しかも「HIGH PRIESTESS」と書かれている。
乾くるみがタロット・カードの絵柄をモチーフにした作品を書いているのは知っていたが、この作品もそのひとつに含まれていたとは知らなかった。しかも解説を読んで驚いた。『イニシエーション・ラブ』も『嫉妬事件』もこれに含まれていて、作中のどこかで天童太郎が登場していたというのだ。
いやはや、ネットを検索すれば簡単に情報が手に入るこの時代において、知らなさ過ぎるにもほどがあると思った反面、こうして驚くことで楽しめたのだからまあいいかと思ったりもする。
さて今回も『イニシエーション・ラブ』と同様に表層レベルでは恋愛物語が描かれるだけなのだが、語り手が不幸な生い立ちを背負っているせいもあってか、読み終えてものすごくいやな気分になってしまった。
『イニシエーション・ラブ』とは違うところに驚きをもってくるはずだと思いつつ読むのだが、基本的な構造が同じなためにまんまと作者に騙されてしまった。
コメント