最初の予定表では『思い出アルバム』という仮題だったのだが、実際に発売されてみると『惨劇アルバム』になっていた。
基本的にホラーは嫌いなので、いかに小林泰三の新刊であってもホラーだったら買うのを躊躇してしまうのだが、今回、何の躊躇もせず買ってしまったのは最初の題名が『思い出アルバム』だったせいも多分にある。
しかしこの表紙の絵、どこかで見たような記憶があるなあと思ったら御茶漬海苔だった。この人の漫画も嫌いなんだよな。
同じ光文社文庫で以前に出た『セピア色の凄惨』と同等のホラー。
語り手が、幸せな過去の思い出を思い出そうとしてみると実は惨劇の思い出だったというような話ばかりの連作短編集。
しかもそれがとある一家の物語で、一話ごとに語り手が変わるのでわりとバリエーションにとんでいる。小林泰三の特徴のひとつであるグロテスクな描写はほとんど無いので、その方面が苦手な人にも楽しめるのだが、奇妙な論理を振りかざす人たちは相変わらず登場し、その奇妙な論理を振りかざすことによって決して自分の考えを決して曲げない人たちの様子は読んでいて陰鬱な気分にさせられる。
一方、その論理がギャグの境地に達してしまっている場合もあって、おかしな論理に頭が痛くなる反面、噴出してしまいそうになる笑いの論理もある。
コメント