冬子と隼人は従兄妹同士。
隼人の母親は十数年前に失踪し、それ以来、冬子の家族は何かと隼人の家族を気にかけ家族同士の仲は悪くない。
が、冬子は隼人に恋心を抱いているのに対して隼人は冬子の恋を受け止めようとしなかった。
それ以来、冬子は隼人が大事にしているものを奪い、壊し続ける。
隼人が大事にしていた折り紙の動物を燃やしてしまった事から始まり、壊す対象は物理的なものから精神的なものへと変る。しかし、それでも隼人は冬子を見捨てようとはしない。自分が大事にしているものを奪われ続けていても。
痛々しい思いと、隠された秘密。
冬子と隼人の二人の間に、美鳥とスオウという二人の少年少女が出会ったことから、それまでの危うかった冬子と隼人の関係が崩れはじめるのだが、崩れ、そして壊れたことで再生が始まる。そして再生がはじまると同時にもう一組の間柄である美鳥とスオウたちの物語に焦点があたり、守ろうとして覆い隠してきた過去があばかれ明らかになる。
四人の関係の対比と構図がよく出来ている。強いていえば二段構えで山場があるというか、最初の山場だけでも十分なのに、その後にさらに大きな山場が待ち構えているのだ。
序盤を読んで感じた物語とはぜんぜんかけ離れて、いい意味で予想を裏切って衝撃を与えてくれた物語だ。
コメント