前巻の後をついで順調に面白い。
今回はイスタンブールという街を舞台として空間的にはほとんど動かないのだが、イスタンブールはイギリスとロシアという二大強国に狙われているという状況下であり、さらにはスルタンの専制を快く思っていない反政府組織が登場したり、物語の舞台としては適度に込み入った状況であり、冒険心をくすぐられる舞台設定だ。
主人公のアレックとデリンの関係は親友と呼べる状態にはなりながらも、アレックは自分の秘密をあちらこちらでべらべらとしゃべって正体を明かしてしまっているのに対して、デリンは自分が女であることはまだ明かしていない。そんな状況で、反政府組織のリーダーの娘なんて新キャラクターが登場して三角関係が作られるあたり、物語全体の大枠もそうだけれども、細部の作りこみがうれしいところだ。もっとも物語的にはほとんど何も進んでいないといってもいいほど進んでいないんだけれども、主人公たちと一緒に翻弄されるのが楽しいから不満はない。
フィリップ・リーヴの<移動都市>シリーズがやたらと主要人物が死ぬのに対して、こちらはほとんど死なない。
もちろん最終巻では死ぬ人物も出るかもしれないけれども、主要人物が死ななくっても面白いってのはジュブナイル小説の理想的な在り方なんだろうなあと思う。
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