『千年万年りんごの子 1』田中相

  • 著: 田中 相
  • 販売元/出版社: 講談社
  • 発売日: 2012/7/6

Amazon

『地上はポケットの中の庭』の田中相の新作だ。
今回は長編、しかもこの巻だけでは完結していなくまだ続く。
『地上はポケットの中の庭』ではバラエティ豊かな短編たちだったが、今回は日本を舞台にし、しかも青森の閉鎖的な片田舎の社会を描いている。閉鎖的な社会を描いていながらも風通しのよい絵柄は健在で、それが適度に心地よいアクセントになっている。
魅力はもちろん風通しの良い絵柄だけではない。人物の表情が素晴らしい。五ページ目のおじいさんの笑顔がそうだ。
こういうおじいさんの笑顔を描くことができるだけでも田中相の描いた絵を信頼することがが出来る。
さらには、今回もまた、表紙カバー裏にいろいろと書き込みがなされていて、うれしいことにこの物語の舞台となる屋敷の見取り図まで描かれている。ただし、今回は二階家のうち、一階部分だけだ。二巻では二階部分を描いてくれることを期待しよう。
で今回は、物語はお寺に捨てられて親を知らずに育った青年がリンゴ農家の娘とお見合いをし、入り婿に行くという話なのだが、そこでその村に古くから伝わる因習を知らずに禁忌を破ってしまう。食べさせてはならないリンゴを風邪で寝込んでいた妻に食べさせてしまうのだ。
お見合い結婚ということで夫婦の間の愛情というものもまだ定まっていない。捨て子ということで流されるままに生きてきた主人公。妻を取り戻すために動き出そうとするところで今回は終わってしまう。
続きは来年の春。
待ち遠しくてたまらない。

コメント

タイトルとURLをコピーしました