『眉村卓コレクション異世界篇I ぬばたまの…』眉村卓

  • 著: 眉村 卓
  • 販売元/出版社: 出版芸術社
  • 発売日: 2012/6/22

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眉村卓コレクションの第一巻が出た。
日本SF全集3巻は一体どうなっているんだろうかとついつい思ってしまうのだが、これと比べると眉村卓コレクションの方は後二冊、順調に出そうなかんじだ。
主人公は作者自身を彷彿させる人物。そのことに特別な仕掛けがあるというわけでのないのだが、作者の分身とも捉える事ができるということは物語として面白い雰囲気を醸し出している。
主人公はあるとき突然、真っ暗な世界に来てしまう。ようするに「ぬばたまの」世界なのだが、作者と等身大の主人公であるが故に、異世界へ来てしまったことの悩み方が、普通の物語の主人公とは異なるのである。
綺麗にわかりやすい形で悩まないというか、ある意味うじうじと悩むというか、自分が迷い込んでしまった世界のあり方を自分なりに理解しようとしながら等身大の形で悩み続けるのだ。
よくもまあこんな奇妙な物語を考え出したと思うのだが、一方で、眉村卓だからこそこういう形の物語を作ることができたとも思える。<司政官>シリーズの主人公たちとほぼ同じような思考をしているのだ。
そして「ぬばたまの」世界がどういう世界なのかということも明らかになっていくのだが、この世界の仕組みにもちょっとしたひねりがあって、最初に明らかにされる世界の成り立ちこそありふれた成り立ちなのだが、そのあとで明らかにされる世界の仕組みはSFとしてみた場合にかなり骨太な設定で、純粋なSFとして読んでも十分なほどの強度を持っている。

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