村上春樹がチャンドラーの『長いお別れ』を新たに翻訳しなおした時には清水俊二が省略した箇所などを省略せず忠実に翻訳したということなので読んでみたが、その後で翻訳した『さよなら、愛しい人』は読まなかった。まあどんな内容だったのか忘れてしまっているので読んでも良かったので、そのうち読んでみるかもしれないが、それがいつになるのかはわからない。
で、僕が読んだことのあるチャンドラーの長編はというと、後は『プレイバック』だけで、『高い窓』が積読状態でいる。どれも早川文庫で出ているものだ。
だから村上春樹が『かわいい女』を『リトル・シスター』として翻訳した時には文庫化されたら読んでみようかという気持ちだった。まあ、文庫化されるまで待っても構わないというあたりが僕とチャンドラーとの距離間でもある。
で、文庫化されたので読んでみた。
村上春樹のあとがきを読むと、どうやら愛すべき駄作らしい。
実際に読んでみると、登場人物はたくさんで、物語の展開も複雑なせいもあるだろうけれども、どうも物語の流れがうまく頭の中に入ってこない。
マーロウのセリフなどは魅力的で、細部は確かに面白いのだけれども、全体としてみると、荒削りというか整合性のとれていない夢を見ているような感じだ。
しかし、これは原文に忠実に訳した結果なのかもしれず、村上春樹訳ではなく、清水俊二訳の方を読んだとしたら、もう少し印象が変わっていたのかもしれない。
村上春樹自身はあとがきを読む限り、チャンドラーの長編の翻訳をまだ続けるつもりらしい。次は何を翻訳するのだろうか。
『プレイバック』も訳してくれるとうれしい。村上春樹が『プレイバック』をどう訳するのか興味のあるところだ。
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