『ピカルディの薔薇』津原泰水

  • 著: 津原 泰水
  • 販売元/出版社: 筑摩書房
  • 発売日: 2012/7/10

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『蘆屋家の崩壊』の続編。
『蘆屋家の崩壊』の方は集英社文庫から出たものを読んでいたのだが、今回、『ピカルディの薔薇』が、ちくま文庫で文庫化されるにあたって『蘆屋家の崩壊』の方も同じくちくま文庫に移籍され、さらに収録作の一部が再構成されてしまったので、ちくま文庫版の『蘆屋家の崩壊』の方に未読の短編が一遍、収録された状態となってしまった。
未読の一遍を読むためにちくま文庫版の『蘆屋家の崩壊』を買うべきか悩むところなのだが、それはさておき、『ピカルディの薔薇』の方はというと、『蘆屋家の崩壊』とだいぶ印象が変わっていた。
前作は伯爵の存在が大きかったのだが、今回は伯爵が登場する話は少なく、猿渡が文字通り主人公として不思議な出来事に巻き込まれ、困惑される。しかし、エドガー・アラン・ポーに連なる物語であるとすれば、こちらのほうがより幻想的となり本来の趣向に近づいた作品とも言える。もっとも、どちらも津原泰水の作品であり、ともに文章を味わい、楽しむ事ができるのはたしかだ。
前作つながりでは「フルーツ白玉」が楽しめるのだが、作者のあとがきにも書いてあるとおり、最後にカランと音が聞こえる気がする一品で、これはなかなか良い。

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