『リフレイン』沢村凜

  • 著: 沢村 凜
  • 販売元/出版社: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/7/25

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前半は宇宙船の故障で不時着した異世界でいかに生存するかという異世界サバイバルで、後半は母星から救出された後、殺人の罪で終身刑にされそうになる人物を如何にして救うかという法廷サバイバルになる不思議な物語。
こんな物語で日本ファンタジーノベル大賞に応募しようとした作者もすごいが、最終候補作にまで残ったという事実もすごい。
どことなくだが、前半の部分はジョン・ブラナーの『原始惑星への脱出』を彷彿させる感じがする。ジョン・ブラナーの『原始惑星への脱出』も、サバイバルの様子を描くというよりも生き残った人々の間で起こる様々な確執がメインの話で、そう考えるとこの話だけではなく、沢村凛の他の話もジョン・ブラナーの作品と同じような雰囲気があるというか、作風が似ている感じがする。もっともブラナーの場合は社会的というよりも主人公の精神的な成長といった部分に比重が置かれているんだけどね。
エンターテインメントとして面白くなりそうな部分がありながらもそこに比重をおかず、徹底的に殺人を否定する文化と、多数を活かすためには殺人を否定しない文化との対立という、どう考えても答えの出そうもない困難な問題を描いているがためにバランスが悪くなってしまっている。事実、作中の登場人物が「話す言語が違う」としてある意味、それ以上のコミュニケーションを断念してしまうような言動をしている部分がある。しかし、ここで語られているような共存不可能な問題を後の作品ではうまく処理しているので、今の沢村凛ならばこの作品で語られている問題に関してもっと異なった決着の仕方をするんじゃないかという気もする。

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