題名は『楽しい終末』なのだが、内容に関していえば殆どの人にとっては楽しくない内容だ。
まあ、終末が楽しいなんて思う人は殆どいないはずなのだが、ごく一部の人にとっては終末は楽しいのだ。
そして、僕自身もそのごく一部の人に含まれる。
作者自身もこの本の中で書いているように、終末の光景に、どこか心惹かれるものがあるというのは否定出来ない事実で、そう、ごく一部の人は終末に憧れているのだ。
そもそも、僕自身、終末を扱ったSF小説が大好きで、一時期はそればかりを探して読んでいたこともあった。
かといって、本当に終末を望んでいるのかといえばもちろんそんなことはなく、そこには、滅び行くという事に対する複雑な感情が存在する。
ラリー・ニーヴンとジェリー・パーネルが合作した小説に『悪魔のハンマー』という小説がある。彗星が地球に衝突して文明が滅んでしまい、生き延びた僅かな人々が秩序を取り戻そうとしていくという話なのだが、登場人物の一人は自分の命をかけて自身が所有している大量の書物を保存しようとするエピソードがある。
周りの人々は、そんな役にも立たない書物を保存することに労力を割くことを否定する。もちろん生きるか死ぬかという時に、燃やして暖をとることぐらいしか役に立たない本を大切に保存しようとする方がおかいいのだが、物語の終盤、文明復興の兆しが見え始めた時に彼が残した書物が役に立つのである。
もちろん、それは結果論にすぎないのだが、この物語は文明が失われようとする段階において、それまでの高度の科学技術をどうやって残し、引き継いでいくかという問題を扱っているのである。
僕が終末を好きな理由というのはこの小説の影響が大きい。つまり終末でありながら、滅亡ではないということなのだ。終末においても滅び行かない方法を考え続けるということに魅力を感じるのである。
『楽しい終末』池澤夏樹

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