メビウスの絵を見るとどうにも落ち着かない部分がある。
それはメビウスの絵を無条件で素晴らしいと思うことができないからで、それは個人的な問題なので別に構わないのだけれども、それでも世間でのメビウスの評価の高さと比較してしまうと、世間での評価の高さをそのまま無条件で受け入れることができないことが落ち着かない原因なのだ。
今までに何作かメビウスの漫画が翻訳されたのだけれども、それを読むたびに、メビウスの傑作はこれではなく他にあるんじゃないかという気持ちになる。
で、ひょっとしたらメビウスの傑作はSF系の作品ではなく、本名のジャン・ジロー名義の作品の方なんじゃないかと思っていたりもしたのだが、ジャン・ジロー名義の作品は翻訳される気配もなかった。
が、やはり亡くなったということは影響力が多いようで、ジャン・ジロー名義の傑作、<ブルーベリー>シリーズの一部がこうして翻訳出版された。
こうなればもはや読むしかないというわけで読んでみたのだが驚いた。絵がだいぶ違うのだ。
40年近くにわたって描き続けてきたというのがその理由の最たるものだが、収録されている三作品のうち、最初の二作と後の一作との間には20年近くの年月の差がある。とくに僕の知っているメビウスの絵をというのは1980年移行の絵で、この本の「黄金の銃弾と亡霊」はそれよりも昔の絵なのだ。
メビウスも最初から完成された絵だったのではなかったんだなと思うと同時に、それ以降、どんどんと洗練されていくメビウスの絵の凄さを感じた。
それにしても、分量にして150ページほどの分量であるのだが、密度が濃い。セリフなどの文字量も多いこともそうなのだが、絵の密度が高いので、飛ばして読むことができない、というか勿体無くてそんなことができないのだ。
ただ、残念なのは、25.8cm x 19cmという大きさでありながらも原本よりも小さいということだ。そのおかげて文字の大きさも小さく、もちろん絵の大きさも原本よりも小さい。やむを得ないとはいえそこだけが残念なのだ。
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