電子書籍用端末というと、世間ではAmazonのKindleとか楽天のKoboとかが、良い意味でも悪い意味でも話題になっている中、ほとんど話題にもされていないSonyのSony Readerを買った。
そろそろ蔵書の収容スペース問題というものを真面目に考えなければいけなくなっている現在、電子書籍はその解決策の一つで、だいぶ前から電子書籍に関しては検討してはいたのだが、だからといって使い勝手の悪いものを買っても仕方がない。
タブレット端末ならば、仮に電子書籍端末として失敗しても他の使い道があるので電子書籍用の端末として買ってもいいとも思ったのだが、タブレット端末はバッテリーの持続時間が8時間程度なので足りなさすぎる。もっとも、8時間も連続して読書をするのかといえば、そんなこともないのだが、しかし一日使用した場合、寝る前に充電しておく必要があるということは読みながら寝てしまうということが出来ないということで、常にバッテリーの残量を気にしなければいけないというのは論外だ。
となると液晶画面のタブレット端末ではなく電子ペーパー、E-Inkを使った端末しか候補はない。E-Inkであればバッテリーは1ヶ月は十分に持つ。
だたその場合の難点は画面の大きさが6インチということと、モノクロであるということと、画面の書き換えに一度画面全体を暗転させなければいけないという点だ。結構欠点は多い。
紙の本になれている身としては見開き二ページ分程度の活字が一度に見渡せるほうがいいのだが、その半分程度になってしまう6インチという大きさは活字の本が主であれば我慢出来ないこともない。コミックを見る場合は6インチという大きさは辛いものがあるが、文庫本サイズで出ている漫画を読むという気持ちであればこれも許容範囲だ。ただ、コミックの場合は見開き二ページ分は欲しいけれども。
画面がカラーではなくモノクロであるというのも、活字の本が主であればそれほど問題でもない。円城塔の『後藤さんのこと』など、本文中に色が使われている場合は厳しいが、そういう本は紙の本を買えばいいのだ。
で、最後のページの切り替え時の暗転だが、最近は改良されてきていているので毎ページではなく数ページごとに発生するといった感じになってきている。これも許容範囲内といえる。
となると候補に上がるのは、はAmazonのKindle、楽天のKobo、SonyのSony Readerの三つだ。
たまたま、実機を触る機会のあった楽天のKoboは、画面をタッチした時の反応速度が悪過ぎで候補から脱落した。本を選択するのに時間のかかるのは仕方ないが、ページをめくるのに画面をスワイプしなければならなく、そのスワイプが感知されないことが多いのだ。もっとも、ファームウェアのアップデートが行われているので、最新のファームウェアではだいぶましになっているようだが、それでもページをめくるのに、めくれたのかどうなのかよくわからないという状態はストレスになる。だいたいが、電子書籍なのにページをめくるのに画面をスワイプしなければいけないというのが面倒だ。
そうなると、三機種の中で唯一、物理的なボタンがありそのボタンを押すことでページをめくることのできるSonyのSony Readerしか選択肢が残らなくなる。というわけで、AmazonのKindle Paperwhiteがもうじき発売予定という状況でありながらもKindle Paperwhiteには物理ボタンが無いので候補から外し、Sony Readerを買ったのだ。
実際のところ、Amazonでしか書籍を購入できないKindleに比べると、Sony ReaderはReader Store以外に紀伊國屋書店や電子書店パピレスでも対応したフォーマットの電子書籍があればそこで購入することができる。さらにマイクロSDカードも使用できるので容量的にも安心だ。もっとも、活字ベースの本であれば本体の容量だけで十分足りるのだが。
実際に使ってみると、やはり紙の書籍にくらべると使い勝手は悪い面もあるのだが、ページをめくるのにボタンを押すだけというのはなかなか快適だ。一応、画面のスワイプでもページをめくることはできるのだが、やはりボタンを押すだけのほうが楽である。
地味ながら、ボタンを長押しすることで高速にページ送りができる点もわりと便利だ。紙の書籍でぱらぱらとページめくりをしている感覚に近い。ただ、かろうじて許容範囲というレベルだが。
翻訳小説の場合、特にミステリの場合は最初のページに登場人物一覧がある場合が多い。
登場人物が多い場合など、この登場人物一覧は重宝するのだが、電子書籍となるとこの登場人物一覧を参照するのが少し不便になる。
Sony Readerの場合、画面の右上をタップするとそのページがブックマークされるので、この機能を使って登場人物一覧のページをブックマークしておく。そして一覧を見たくなった時どうするのかといえば、いま見ているページをブックマークして、メニューボタンを押しメニューを表示させ、そしてその中から「ノート」を選択し、登場人物一覧のブックマークを選択する。そこでようやく登場人物一覧のページを見ることができる。で、もとのページに戻る場合は再び逆の手順で、メニューボタンを押して、「ノート」を選択し、元のページのブックマークを選択して戻るのだ。一覧表示を表示する前に、現在のページをブックマークし忘れると、ページ早送りか、ダイレクトにページ番号を入力しページジャンプするかどちらかしかなく、いずれにせよストレスが溜まる。
かろうじて我慢できるというレベルで、紙の書籍と比べるとだいぶ使い勝手が悪い。
その他、紙の書籍の場合、短篇集などではページの上部に短編の題名が印刷されている場合が多いし、長編でも章題が印刷されていたりして、これが僕にとっては結構便利な情報なのだが、電子書籍になるとこれが表示されない。無くても不便に感じない人が大半かもしれないが、将来的に改善されるといいなと思っている。
ただ一番の問題は端末の機能よりもコンテンツの方で、やはりまだ新刊が電子書籍で読むことが出来ないという状況なのだ。早川書房が一ヶ月遅れで電子書籍化の対応を発表してくれたのはいいが、当面は作者の許諾を得ることができたものだけである。他の出版社も似たようなもので、どの本を紙の書籍で買い、どの本を電子書籍で買うのかということの判断が難しいのだ。一ヶ月待てばわかるとはいえ一ヶ月待つと、地方の普通の書店では棚から消えてしまい、ネット書店で買う以外方法がなくなってしまう。
結局、既刊でなおかつ絶版となっている本しか買わないような状況に近く、それならば古書を探して買ったほうが安かったりするので、悩ましいところである。
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