『日本語を使う日々』吉田戦車

  • 著: 吉田 戦車
  • 販売元/出版社: 4093882444
  • 発売日: 2012/4/5

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電子書籍端末を買って一番先に読んだのが吉田戦車の『日本語を使う日々』だ。なんとなく、電子書籍で一番先に読むのがちょうどいいようなタイトル、そして内容のような気がする。
過去に出た『吉田自転車』『吉田電車』『吉田観覧車』はそれぞれ、自転車、電車、観覧車に乗ってどこかに行く、もっとも最後の観覧車は乗ってどこかに行くのではなく乗るためにその場所へ行くのだが、紀行エッセイ的な要素があったに対して、今回は題名のとおり日本語にこだわったエッセイだ。
伊藤理佐との結婚に関して触れられていたり、過去のエッセイに登場した山梨の別荘のその後について語られたりと、今までのエッセイ本を読んでいる人にとってはなにか感慨深いものもあるけれども、それはさておき今回は独特の言語感覚を持つ吉田戦車が、その言語感覚を持って日本語と、がっぷり四つに組んだエッセイ集なので今まで以上に面白い、かと思うとそれほどでもなく、適度に力の抜けたゆるい感じの面白いエッセイに仕上がっている。
一筋縄という言葉からホームセンターに行って一筋縄の値段を確認しに行き、そこで「庭の友」なる縄を見つける話などはクラフト・エヴィング商會の『ないもの、あります』っぽいことを実践しているような話だし、 食堂で熟考の末にたのんだメニューが、当たりだったかはずれだったかを「負けめし、勝ちめし」と言っている様は、泉昌之の『食の軍師』っぽいことを常に実践しているかのようで、つくづく吉田戦車の天才っぷりにおどろかされる。
合間に挟まれるイラストも省略されずに挿入されていて、そもそも内容が内容だけに気楽に読むことができるので電子書籍として読んでもそれほど不自由は感じない一冊だった。

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