『快楽としてのミステリー』丸谷才一

  • 著: 丸谷 才一
  • 販売元/出版社: 筑摩書房
  • 発売日: 2012/11/7

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丸谷才一のミステリに関する文章を集めた一冊。
解説の文章を読む限り、丸谷才一本人が解説を自分に頼んだということが書かれているので、他者による編集ではなく自選の本のようで、この本がおそらく丸谷才一自身が手がけた最後の本になるのかもしれない。
実をいうと丸谷才一の小説は読んだことが無い。でも僕にとって丸谷才一は重要な位置にいた人でそれは丸谷才一が、いまでも僕にとってのバイブルの一冊である『深夜の散歩』の著者の一人であったということである。
一方で丸谷才一は『フィリップ・マーロウという男』という文章を書いたということで、僕だけではなく、ハードボイルドの世界においても重要な位置にいた人だ。
プレイバック』『プレイバック part2』『プレイバック last part』でも書いたように、丸谷才一がこの文章の中で、「しっかりしていなかったら、生きていられない。優しくなれなかったら、生きていく資格がない」という言葉を箴言として書かなければ、日本でこの言葉がここまで有名になることは無かったかもしれない。
この本にはこの文章が再録されているだけではなく、その後にもう一度、丸谷才一がフィリップ・マーロウのこの言葉について触れた「角川映画とチャンドラーの奇妙な関係」も収録されている。
ただ、「角川映画とチャンドラーの奇妙な関係」の中で丸谷才一は生島治郎も、角川映画の宣伝文句としてフィリップ・マーロウのこのセリフを改変して使われたことに憤慨しているだろうと書いてあるけれども、「タフじゃなくては生きていけない。やさしくなくては、生きている資格はない」と訳した生島治郎はそれほど憤慨していなかったんじゃないかと思う。
『深夜の散歩』から後の丸谷才一のミステリに関しての文章は読んだことがなかったのだが、この本は、『深夜の散歩』も含めた上でさらにそれ以降の丸谷才一のミステリ史観を網羅した一冊となっており、丸谷才一の深夜の散歩がその後どこまで行ったのかがわかる興味深い本となっている。

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