最初の刊行予定では『12月の雨の日』という題名だったのだが、発売予定が延びていくうちにいつしか『爛漫たる爛漫』という題名に変わっていった。一冊のみで完結するわけでもなく二巻目が刊行予定に上り、さらには作者のあとがきによると第三部までは構想済み、とそれ以降も続く気配もある。
170ページとかなり薄く、長編と云うよりも中編といったほうがいい感じでもあるが、ではその分、読み甲斐が少ないかというとそんなことはなく、確かにページ数が少ないせいで、亡くなったロックグループのボーカリストの死の謎を追うというミステリ仕立ての物語であることを思うと、二重三重にどんでん返しがあるわけではなく、あっさりと謎の解明が行われ、事件の真相が明らかとされてしまうのだが、そもそも、この一冊だけで完結する物語ではなく、作者のあとがきによれば、続く第二作では、第一部のこの物語をひっくり返すことになると予告されているわけで、ミステリ的な楽しみは第二部に持ち越して楽しめばいいのである。
で、それらを取り除いて、この第一部が面白いのかというと、単独でも面白いのである。無駄がないというか、一文さえも無駄に読み飛ばしできない文章でありながら、どこか爽やかで、それでいて不穏な影が取り巻いている。
問題は、連続で刊行されると思っていたらそうじゃなかったことだ。
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