未来からやってきたアンドロイドたちが、人類の歴史に関与し始める。
といっても征服目的ではなく、人類を不幸から救うためで、未来で起こった災害や事故等を過去に戻って未然に防ぎ、人類のために奉仕するという目的でやってきたのだ。
世界規模のドラえもんでもあるのだが、このあらすじを読んで真っ先に思い浮かんだのはジャック・ウィリアムスンの『ヒューマノイド』だった。
僕は『ヒューマノイド』は未読なのだが、これの原型短編となった「組み合わされた手」の方は読んでいて、こちらは未来ではなくウィングIVという惑星から人類に奉仕するためにやってくる話だ。
実際、作中で主人公が『ヒューマノイド』に関して言及しているので、この物語を書くにあたって影響を受けた話の一つであることは確かなのだが、逆に、影響を受けたのであれば、どのようにそこから発展させていくのかという部分に興味があった。
しかし、その一方で作者をモデルとした主人公、そして作者の半自伝的とも受け取れる物語の展開は、あくまで半自伝であって本当のことを書いているとは限らないことを理解していながらも、ここまで赤裸々に書いてしまっていいのかと心配にもなってくる。
未来からやってきたアンドロイドたちは自分たちの歴史を改変していくのだが、そこからアンドロイドと人類の共存する世界が始まるわけではなく、アンドロイドたちは十年経つと十一年前へタイムトラベルを行ない、その時代の人類に奉仕するために災害を未然に防ぎ歴史を変えていくのである。しかし、語り手は2001年の作者であり、アンドロイドたちが去った後もこの世界で生活し続けて行かなければならない。
ラストは希望のあるラストではあるのだが、勝手に自分たちの世界を変えられ、未来も変えられて、そして為す術もなく傍観する立場でいるしかないという状況下、この物語はいつになく重苦しい展開を見せる。
『去年はいい年になるだろう』山本弘

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