絵柄をわざと変えたのか、それとも自然の成り行き的に変化していったのか、以前の作品と比べるとだいぶラフな感じになった。
もちろん、それはそれで別に構わないのだし、この物語の雰囲気にも合っているのだから別に不満でもないのだけれども、どこか居心地の悪さを感じてしまう。
でも、その居心地の悪さは絵柄の問題ではなく絵柄と作品から流れてくる雰囲気というか、うまく表現できないのだけれども多分、吉田秋生が紡ぐこの物語自身が強く訴えてくる何かがそう感じさせているのかもしれない。
物語の中を流れていく時間はけっしてゆっくりではない。一コマの中で数週間が経過する場合もあるのだが、それでも時としてものすごくゆっくりと時が流れていく。緩急の具合がとてもうまいのだ。
だからかもしれないが全体を見てみるとゆっくりと時が流れていくような錯覚に陥り、それ故に登場人物のセリフや仕草が心に染み入るのだ。
この物語の中で、登場人物の一人がこんなことを言っている。
でも神様は人の事情をいちいち考えてはくれない
だから神様は
ありがたくて恐ろしいんでしょうね
僕の妻は、自分が統合失調症という病気になったことを、時として人の頭の中を読み取る技術を持った裏組織に目をつけられたせいだ言い、時として、自分が昔、自分が知らぬ間に誰かを傷つけてしまったことに対する天罰だと言う。
前者は妄想が強くなった時の言動で、後者は気分が落ち着いている時の言動だ。
そしてそのあとで妻は、神様なんてこの世には存在しないと言う。
口には出さないが、そうだね、と僕も思う。
肯定してあげたほうがいいのか、否定してあげたほうがいいのか僕には判断がつかない。
ただ、吉田秋生の登場人物の言うとおり、かりに存在していたとしても神様は人の事情をいちいち考えてはくれないのだろう。
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