『ゴリアテ ―ロリスと電磁兵器―』スコット・ウエスターフェルド

  • 訳: 小林 美幸
  • 著: スコット ウエスターフェルド
  • 販売元/出版社: 早川書房
  • 発売日: 2012/12/7

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『量子怪盗』の方は三部作でありながら続きが出るのか出ないのかわからない状態で、でも、一応は単独で完結しているので、でなくっても仕方ないかと思うけれども、こちらは予定通り三部作が無事翻訳されて完結した。
予告では日本が舞台となる場面もあるということだったけれども、実際はアメリカへ行く途中にちょっとだけ寄ったという程度で深く物語に関わって来なかった。設定上は日本の立ち位置が面白い立ち位置にあっただけに残年な気もするけれども、イデオロギー的な部分よりもビジュアル的な部分を追求したわけだから仕方ないか。
広げた風呂敷をたたまなければならないのだが、どのようにたたんだのかというと、ちょっと予想から外れた形でたたんで、あれやこれやと意味ありげに登場した事柄が、物語の終結にどんな形で関与したのかというとほとんど関与していないというところが、個人的には逆に新鮮で面白かった。
振り返ってみると、父親が残した莫大な金塊も物語の途中で惜しげもなく捨ててしまったし、それを考えると、この作者がいろいろなものを役立たせずに途中で捨ててしまう傾向にあるというのも予想がつくというもので、意味ありげに登場したロリスも、ローマ教皇の詔書もあっさりと切り捨てられるのも当たり前といえば当たり前か。
で、その結果何が残ったかといえば、主人公二人の恋の物語で、それでいいのかといえば、そう簡単に世界が平和になるわけでもないのだから、これでいいのであるとしかいいようがない。

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