有永イネの新作。
今回は宮大工が主人公と、一風変わっている。もっとも物語が始まった時点、さらにはこの巻が終わった時点でも主人公は宮大工ではないのだが、宮大工の家に生まれながらも高所恐怖症のために宮大工への道を諦めそしてその結果、24歳になっても自分の進路を決めかねている青年が主人公で、彼の血の繋がらない弟が家業を継いで宮大工の修行中。しかし、弟のほうも弟のほうで才能がありながらも悩みを抱えている。
そんな二人をメインに、さらには木の神様が登場して、事態はさらに複雑になっていく。そもそも宮大工であれば木の神様が見えるという設定で、その木の神様は一柱だけではなく一本の木に一柱の神様が存在するという設定。それでいて宮大工ではない主人公にはなぜかその木の神様が見えるようになり、さらには主人公が木に触るたびに新たな神様が出現していく。
そんなこんなで表面上はコミカルなユーモアであふれているのだが、宮大工ではない主人公にそんな恵まれた能力が発現したということで兄弟のあいだでの葛藤が生まれていく。
ユーモアとシリアスとのバランスが一種独特の味わいを醸し出していて、兄弟の行く先が気になるのだ。
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