西澤保彦はSF的な設定でもって本格ミステリを書いているという点で、SFもミステリも好きな僕にとってど真ん中の作家なのだが、実際のところあまり読んでいない。
なぜかというとそれはやはり西澤保彦が登場人物の心理的な部分に深く突っ込んでいるせいだろう。そのせいで、どこか後味の悪いいわゆるイヤミスっぽさがあって、ちょっと敬遠気味になってしまうのだ。
だけれども、予めイヤミスであることがわかっていれば、そういう話を読む気分になった時に読むのにちょうどいい作家で、今回もなんとなくそんな気分だったのだ。
で、手にとったのは偶然だけれどもあとがきによると、『パズラー 謎と論理のエンタテインメント』以来のノンシリーズ物の短篇集らしくって、『パズラー 謎と論理のエンタテインメント』も読んでいたのでなんとなく不思議なめぐり合わせでもあった。
『パズラー 謎と論理のエンタテインメント』に比べると論理のねちっこさというのが少し薄れ気味で、そういう可能性もあるよねという終わりかたをしているものも多いが、論理の薄さの変わりに後味の悪がが実に濃い。
表題作だけでなく、他の作品もこの本のタイトルどおり、動機が異常で、そして語り手は最後に沈黙に至るのだ。
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