安定した高品質の描きおろし短編SFアンソロジー集だった『NOVA』もあと一冊、『NOVA10』で一旦終了してしまうようだ。
コンスタントに出て、どの巻も楽しめるということでは楽しみにしていたアンソロジーだったので残念なんだけれども、終了する理由というのが売れなかったという理由ではないところは、せめてもの救いかな。少なくとも短編SFアンソロジーがある程度の商業的利益を出すことができているという状態は続いていて、誰かが企画をすれば、同じようなものが出る可能性が高いということでもあるからだ。
今までは偶数巻と奇数巻でSF度の割合が変化していたけれども、今回は前半と後半でSF度が変化する。
巻頭は眉村卓の短編。SFなのかというと純度の高いSFではないのだけれども、『夕焼けの回転木馬』を読んだばかりの僕にとっては、今回の眉村卓の短編はなかなか興味深い話だった。
宮内悠介の<スペース金融道>シリーズの三作目や、浅暮三文、斉藤直子の短編が収録されているのは嬉しいが、予想外に強烈な印象を受けたのが片瀬二郎の短編二編だった。
『NOVA7』の「サムライポテト」は切ないいい話だったけれども、続く『NOVA8』の「00:00:00.01pm」は時間ループ物でホラーテイストというところがが衝撃的だったが、今回も素晴らしかった。
「検索ワード:異次元」は要するに『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』のような擬似ドキュメンタリー映画を活字でやった話とでもいえばいいだろうか。もう一つの「深夜会議」の方は、主人公が不思議な現象に見まわれ、なにが起こったのかはわからないけれども何か危ない事が起こっていることだけは確かという状況で、終盤にさしかかって、ようやく主人公は何が起こったのか理解するのだけれども、主人公が理解するタイミングで読者も何が起こったのか理解できるような構成になっている。
片瀬二郎はアイデアもさることながら、そのアイデアの見せ方と語り方がうまい作家だと思う。
『NOVA9』大森望編

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