道尾秀介はうまいなあと思う。
ただ、そのうまさの一つが技巧的なうまさで、その技巧の部分がどうも僕には肌が合わず、道尾秀介が技巧を凝らせば凝らすほど、そのうまさの部分が鼻につく。
球体の蛇という題名、そして『星の王子さま』からの引用、いつにもましてすっきりとしないモヤモヤとした状態の結末と、これまた救いのない真相、それでいて登場人物を見捨てずに救いを与えているラストといい、それぞれの要素がきれいにはまっている。叙述的なトリックとかその他のミステリ的なトリックとかを使わずに、これだけのミステリ的な物語を構築するのは凄いと思うのだが、だからといってそうして出来上がった物語が自分の好みの物語であるとは限らないのだった。
もう一ついえば、登場人物の大半が共感しにくい人物だということ。
それは逆にいえば、どこにでもいそうな人物であって、小説内だけの作り物めいた人物ではないということでもあるけれども、それはこの物語が楽しい物語であればともかく、救いのない陰鬱な真相にたどり着くタイプの物語における登場人物である場合、共感しにくくなる。だからといって主人公たちがどんな悲惨な目にあっても構わないのかというとそうでもなく、どこかに主人公たちの救われる要素が残っていて欲しいと思わせられるのだ。
コメント