有栖川有栖の解説を読んで気付かされたのは、捕物帳の大半が江戸を舞台にしているということだった。
言われてみればそのとおりで、今までいくつもの捕物帳を読んで、それが江戸を舞台にしていることになんの疑問も抱かなかった。
だけども実際には大阪にも捕物帳が成立するだけの素養はあって、過去にも僕が知らないだけで、大阪を舞台にした捕物帳が書かれていたのだ。
しかし、それでも江戸を舞台にした捕物帳と比べると圧倒的に数が少ない。
少ないのだから、ある意味、新たな鉱脈であるのだろうともいえるが、ではこの田中啓文の『鍋奉行犯科帳』がその一歩となるのかというと、それは作者の気分次第かもしれない。
そもそも題名からしてふざけているのだが、中身の方はそれほどふざけてはいない。ミステリ方面でも活躍している作者だけあって、ふざけた題名でなおかつドーヴァー警部を彷彿させるような人物を登場させながらも中身の方は立派なミステリとなっている。
だから、それ故に量産できる話でもないので、この物語がシリーズ化されるかどうかは作者次第ということなのだ。
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