売れそうもない表紙、そして売れそうもない題名。
こんなふうに言ってしまうと作者にはちょっとばかり悪い気もするけれども、『勇者ヴォグ・ランバ』という題名からどんな物語が想像できるのだろうか。
勇者という言葉からファンタジー系の物語を想像してしまうけれども、表紙の絵を見る限り、どうみてもファンタジー系の物語には見えない。そもそも表紙の絵だけみると、作中で使われたコマをコラージュして彩色しただけのように見える。
唯一の救いはオビの惹句で、多分、オビの惹句に惹かれなかったら手にとることすらしなかったかもしれない。
そういう意味でだいぶ損をしている気もするけれども、でもそれでいいのかもしれない。この本の面白さに気づく人間はこれだけで十分気がつくはずだ。
絵といい物語の展開といい、ぎこちなさは多分にあるのだけれども、そんな欠点など吹き飛ばしてしまうだけの面白さがここにはあって、要するに、伊藤計劃が残した課題を律儀に解決しようとする話なのである。
最終戦争による人類の滅亡を阻止するために、ペインフリーという個人の感情を制限させるシステムを全世界規模で導入した世界、いわゆる哲学的ゾンビと化した社会に対してどういう結論をだすのだろうか。全二巻で完結するという適度なボリュームもちょうどいい。
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