オビに「イヤミス」なんて書いてあるのでまあそういう話なのだ。
前作もそうだったけれども、今回も語り手というか記述の視点が明確に定まっておらず時として未来の視点での語りが入ったりして微妙に不安定でその不安定さが物語全体の雰囲気と一致し、あらかた謎は解明されるのだけれども、モヤモヤとした曖昧なままの感じが残り続ける。
表紙の絵もそうで、上部三分の二くらいまではトウモロコシ畑の田舎風景が描かれているのだが、視線を下にずらすとちょと不穏なものが描かれている。
ロバート・R・マキャモンや、ジョー・R・ランズデールの描く南部の物語を彷彿させるのだが、グラント・ジャーキンスの描く少年時代の物語は全然異なっている。
まず、主人公が逃げているということだ。そして主人公を取り巻く環境が容赦なく悪い。
主人公が逃げているからこそ自体はどんどんと悪くなり、そしてなによりも、成長物語という要素が欠けているので、読者が求めるような希望も救いも無い。
どっちにしても予想もつかない展開をするのは確かであり、そしてこの物語に登場させられた人物の大半は作者の手によって不幸な目にあうのである。
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