まず、予想していたよりも薄い本だったので驚いた。
でも、嫌な話を延々と500ページくらい読まされるよりも、短めな話を読んだほうがいいのかもしれない。
収録作品に関していえば、定番ともいえる作品からそうでもない作品まで、コストパフォーマンスを考えてみてもけっこうお買い得な一冊だ。
アガサ・クリスティの短編が収録されているのが意外だったけれども、でも、『オリエント急行殺人事件』では名探偵ポアロにしても真相は探り出すけれども、警察に対しては嘘の真相を伝え犯人をかばう。言ってみればそれだけ犯行動機が身に包まされる嫌な話であったし、『鏡は横にひび割れて』における犯行動機も似たようなもので、自分勝手な、しかし悪意のない行動が殺人事件に結びつくという嫌な話だったことを思うと、このアンソロジーに収録される作家でもおかしくはないのだが、この本に収録された話はそのさらに上を行く嫌な話だった。
パトリシア・ハイスミスの作品も嫌な話だけれども、最初の作者紹介のページの最後の一文がさらに嫌度を上げている。
モーリス・ルヴェルの「フェリシテ」は読んでいたはずなんだけれどもさっぱり記憶になかったが、実にやるせない話だ。
フレドリック・ブラウンの「うしろを見るな」が嫌な話なのかはちょっと疑問なところなんだが、さらにいえば、解説よりもうしろに配置しているのは、この話の設定上仕方ないとはいえ、今さら感があって、やはりこの話は収録する必要がなかったんじゃないかとも思う。
次はだれかSF編を作ってくれないものかな。
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