全二巻でコンパクトにまとまっているのだけれども、やはり文字が多い。
はたして、漫画として見せる必要があったのかというか、小説でも良かったんじゃないかとも思ったりもしないでもないのだけれども、しかし、発現力を行使した結果、半竜化した異形の人物たちの造形は面白い。どこか岩明均の『寄生獣』にも通じる造形センスで、この方面を突き詰めていくと面白い世界を見せてくれるのかもしれない。
SF的なアイデアとして面白いのはやはり「記号」というものに対するアプローチの部分だろう。人が言語によって支配される、もしくは言語の持つ力というのを描いたSFはあるが、ここでは言語ではなく記号というものが大きな秘密を持っている。無論、それは言語を記号に置き換えただけという見方もできるのだが、人は記号の媒介者にすぎないという考えは面白い。この設定のおかげでペインフリーとなった社会をどのように修正していくのかという問題に対して、完全な否定ではなく共存という形を取ることができているからだ。
物語の構成としてはいびつな部分もあるのだが、それでも、最初の命題に対する答えが出たあとで、もう一つの山場を与えているという点で、小松左京の『復活の日』を思い出した。伊藤計劃よりも小松左京のほうに近い感じがするのだが、この作者がこれからどんな方向に向かっていくのかは今後の作品次第なので、今月出る短篇集も期待することにしよう。
『勇者ヴォグ・ランバ 2』庄司創

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