『塔の断章』乾くるみ

  • 著: 乾 くるみ
  • 販売元/出版社: 
  • 発売日: 2012/11/15

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もの凄く凝ったことをしているけれども、そのわりにはそれがうまく表に出てこないというか、そこまで読み取ることのできるひとがどれくらいいるのかというか、ジーン・ウルフを想像してしまった。
ジーン・ウルフという作家も読者の高い知的レベルを要求する作品ばかりを書く作家で、むろん、ウルフが想定するレベルまで読み解かなくっても楽しむことはできるので彼の場合はまだましだけれども乾くるみの『塔の断章』の場合は、表層レベルの物語がそれほど面白いものではなく、むしろそれは犯人当てのミステリとして書かれていて、なおかつ読み手もそのような物語だという前提で読んでしまうので、結局のところ不幸な組み合わせとなってしまっている。特に冒頭に犯行現場となった屋敷の見取り図がついているのも災いしていると思う。見ごとなまでになんの役にも経っていない。
終盤になると、感がいい人ならばこの物語が単なる犯人当てのミステリではないことに気づくだろうけれども、作者が仕掛けた部分はその単なる犯人当てのミステリではない部分だけではなく、それい以外の部分にまで及んでいるというところにこの物語の面白さが潜んでいるのだ。
残念なのはこの新装版、旧刊にあった作者の解説が省略されていることだ。
なんで、省略されたんだろう。

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