東京創元社で最近多い漢字四文字のタイトル。
そして岩郷重力とWONDER WORKZ。による装幀とくるとつまらない内容ではないような錯覚に陥る。
しかし、解説でも書かれているように、著者自らも認めている駄作なのだ。
もっとも、著者が駄作だと認めていても山田風太郎の『忍法創世記』のように、傑作とまでは行かなくても並みレベルの作品もあったりするので、あまりあてにならないのだが、『空間亀裂』の場合は評論家も駄作としているので、まあ、期待して読むとがっかりするだろう。
しかし実際に読んでみると、個々の設定やガジェットは決してつまらないものではない。黒人初の大統領となろうとする政治家、人口爆発に苦しめられて冷凍睡眠が推奨される未来。空間に生まれた亀裂の向こう側では北京原人たちがいて、得体のしれない力をもっている。一つ一挙げていくとキリがないくらいに面白そうな要素が投入されているのだが、通して読むと、つまらないのだ。素材はいいけれども、いい素材を集めすぎて調理に失敗した料理を食べさせられている気分になるのだが、まあ、ここまで来るとというかフィリップ・K・ディックの小説であればなんとなく許せるというか、たまにはこんな話もいいかなという気分にさせられる。
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