どこかで聞いたことのあるようなタイトルだなと思いつつ、なおかつ作者が司城志朗でありながらも、巻末の追記を読むまでは思い出せなかった。
物語が終わった後の紙面に書かれているのは、あとがきでもなく、解説でもなく、追記なのだ。そしてその追記を書いているのは矢作俊彦である。そこでそういうことか、と氷解したのだが、表紙を見なおしても作者の名前のどこにも矢作俊彦の名前はなく、そこに書かれているのは司城志朗と川島透の名前だけ。この本を手にとった最初は川島透という名前もどこかで聞いたことがある名前だったのだが、これもまた思い出せなくって、作者の紹介文を読んでようやく映画監督の川島透だったということを思い出したのだが、追記を読むといろいろとあったようだ。『竜二』とか『チ・ン・ピ・ラ』とか好きだったんだけどなあ。
まあ、それはともかくとして矢作俊彦のプロットによるエンターテインメント系の物語は好きなので、こうしてまた新しい物語を読むことができるのはうれしい。
今回の舞台は日本だが、時代は江戸時代。井伊直弼の暗殺のシーンから物語は始まるのだが、地の文でテロリストとか、イマジネーションといった単語が使われている。時代劇を読んでいると思い込むと違和感はあるのだが、ようするにこれから始まる物語はそういう物語だということを読者に突きつけているのだ。
それ故に、過去の矢作俊彦と司城志朗のコンビによる物語を楽しんだ人間であれば、この物語も同じように楽しむことができる。
唯一の不満は、主人公が抱えている秘密は最後まで明らかにされないことだ。主人公が抱えている秘密は物語を駆動させるためのいわゆるマクガフィンだったと思えばそれはそれで納得もできるのだが、できることならもう少しこの主人公の物語を読んでみたい。はたして続きは書かれるのだろうか。
コメント
続きは書かれますよ♪ 川島監督から司城さんへプロットが渡っています!もうすぐ出版されます♪ (福岡で一緒に映画上映会をやっているものです)