『黎明の王 白昼の女王』イアン・マクドナルド

  • 訳: 古沢 嘉通
  • 著: イアン マクドナルド
  • 販売元/出版社: 早川書房
  • 発売日: 1995/2/28

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「ファンタシーにおいては……すべての物語は三巻を経、妖怪狩猟に言及していなければならない」
デイヴィッド・ラングフォード
長いこと積読状態だったのだが、ようやく読むことが出来た。
『サイバラバード・デイズ』を読み終えた後、買ったまま積読状態になっている『黎明の王 白昼の女王』も読まなければいけないなと思いつつも、なかなか手が出なかった。
結局、こういう場合は勢いに任せて読みきるしかないので思い切って読み始めたのだけれども、読み終えて、これはもう、まんまとしてやられたという気持ちでいっぱいだった。
そもそも、裏表紙のあらすじからしてひっかけのようなもので、先に挙げたデイヴィッド・ラングフォードの言葉も、この本に引用されているけれども、引用場所は巻頭ではなく、巻末だ。つまり、物語の幕が閉じたあとで、作者がぬけぬけと、こんな言葉を引用して締めくくりとしているのだ。
要するに、この物語はファンタジーの体裁を整えているけれども、純粋なファンタジーでは無い。
途中で幕間が入るものの、全部で三部構成になっているこの話は、最初の話こそ、ファンタジー以外の何物でもない体裁となっているけれども、第二部、そして幕間を挟んで第四部と進むに連れて、ファンタジー以外のものがたりへと変化していくのだ。しかし、それでも骨格はファンタジーで全体を読み通すと確かにファンタジー小説を読んだに違いないという気持ちが残ったままであることには間違いがなく、もはや作者にしてやられたという気分になるのだ。
作中でも触れられている通り、あらゆる物をサンプリングして、そしてリミックスする。
こんな物語の作り方ばかりしていたら、確かに途中で息切れしてしまうのも無理もないなあと思いつつも、未訳の長編がまだたくさんあるので、もっと翻訳がされて欲しいと思うのだ。

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