トラブルに巻き込まれた主人公の少年が年老いた解錠師と出会うことで、解錠師の手助けをうけてトラブルを乗り切り、そして成長していく。
というような物語だと勝手に思っていた。
で、実際に読んでみたら年老いた解錠師は登場することはするのだが物語の半ば近くだし、彼は主人公の成長にそれほど関与するわけでもない。さらには表題の解錠師とは主人公のことにほかならないうえに、物語の最初から彼は解錠師で、そして生まれた時から解錠師としての素質を持っている。
主人公は物語の語り手であり、主人公の視点で物語は進み、解錠師しとして犯罪に手を染める前の物語と、犯罪に手を染めた後のエピソードが交互に語られるのだが、その二つのエピソードがどのように結びつくのかという点に関してはそれほど複雑な謎が仕込まれているわけでもなく、そもそもこの物語のどこがミステリなのかというと、ミステリというよりも青春物語といったほうがいいような物語であり、どちらかというとヤングアダルト小説に入れたほうがいいのだろうけれども、それでもやはりこの物語がミステリ小説であるのは、アメリカという国における闇の部分、つまり主人公がどういう経緯でもって犯罪に手を染める結果となったのかということを描いた話だからであって、それ自体は悲惨な出来事でありながらも、この卑怯なまでの読後感の良さはいったいなんなんだろうか。
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