地方の旧家の因習を背景にした横溝正史風の展開でありながらも、そこから醸し出される味わいはやっぱり麻耶雄嵩以外の何者でもない味わいのミステリだった。
ネタバレ気味に言えば、禁じて的なトリックの複合技ともいえる仕掛けで、表層的なレベルでの物語の展開は、旧家の因習と名探偵の立場とが互いに合わせ鏡のような綺麗な構図を描いていてなおかつ、名探偵が事件解決に奔走しながらも、犯人の後手にまわってしまい連続殺人事件となるあたりは横溝正史の作り上げた名探偵、金田一耕助も同じように後手に回っていわゆる防御率が低かったことを継承していたりと、定型的なフォーマットで進んでいく。
しかし、麻耶雄嵩の凄さはそういった部分を単体で扱わず、これでもかといわんばかりに執拗に積み重ねてくるところだろう。
第一部でとりあえず事件は解決するのだけれども、それから18年後に再度、同じ土地、同じ旧家で同じような事件が起こる。さすがに、真相であきらかにされるトリックはちょっと無理がありすぎて興ざめしてしまう部分もあるのだが、このミステリの主眼はそんなところにあるのではなく、犯人の残した手がかりをいかにして論理で正しいものと正しくないものとに振り分けるのかというところにある。
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