『さむけ』ロス・マクドナルド

  • 訳: 小笠原 豊樹
  • 著: ロス・マクドナルド
  • 販売元/出版社: 早川書房
  • 発売日: 1976/09

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ハードボイルド御三家、という言葉があるかどうかはわからないけれども、ざっとネットを調べた限りではわりと使われているようなのでこう書いておくのだが、この御三家の中で、ある程度僕が読んでいるのはレイモンド・チャンドラーだけで、しかも読んでいるといっても長編が四冊だけというありさまで、ダシール・ハメットは長編が二冊、ロス・マクドナルドに限っては一冊しか読んでいない。
もっとも、御三家の中で一番地味、というか多分ある程度の人生経験が無いとその面白さがわからないだろうという点ではロス・マクドナルドだろうから、今まで読んでこなかったとしてもそれはそれで仕方のないことだろう。
しかし、ここ数年そろそろロス・マクドナルドを読む時期にきはじめているんじゃないかという気持ちが少しずつ高まりつつあったのだけれども、生憎とロス・マクドナルドの本は絶版状態だった。
とはいってもロス・マクドナルドならば中古で手に入れるのはわりと容易いのだがこういう場合は電子書籍が好ましいので二の足を踏んでしまう。というようなかんじでうだうだとしていたら『さむけ』が復刊した。
原題は『The Chill』そして邦題も原題どおり『さむけ』だ。
この物語の中で起こる出来事の何が「さむけ」なのかは最後まで読通せばわかるのでそれはともかくとして、ハードボイルド小説としてだけではなく本格ミステリとしても充分に面白い。探偵のリュウ・アーチャーは最初から最後まで冷静でそしてあくまで傍観者という立場でいるためにやはりハメットやチャンドラーと比べると地味という印象は変わらない。しかし、逆にそれが持ち味となっていて、一度この味にハマると抜けられない面白さもある。
多分、秋の夜長に読むとちょうどいいのかもしれない。

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