キム・フィルビーというと僕はジョン・ル・カレの『ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ』で知った知識しかない。
それほどスパイ物は好きじゃなかったのでそれほど読んではいないのだが、ル・カレの『ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ』は面白いと思ったし、この題名はすごくいい題名だと思う。なので、この小説が映画化された時に邦題が『裏切りのサーカス』になった時にはがっかりした。
『ケンブリッジ・シックス』という題名にちょっと惹かれるものがあって手にとったらそこにキム・フィルビーという名前があったのでこんなことをちょっとばかり思い出したのだ。で、思い出すと今度は『ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ』が面白かったという記憶がよみがえり、この本も面白いんじゃないかという気持ちになってきたので、電子書籍化されたタイミングで読んでみることにした。
そもそも拙い知識によると、冷戦が終わったことによりスパイ小説も変化を余儀なくされたわけで、いまさらキム・フィルビーの時代の話を書いたとしてもそれはそれでなかなか難しいものがある。例えていうならば、SFにおけるスペース・オペラと同じようなものなんじゃないかと思うのだ。スペース・オペラはニュー・スペース・オペラと言われる形で現代でも書かれ続けている。
では、キム・フィルビーはどういう形で書かれていたのだろうか。
などと考えながら読んで行ったら、いい意味で裏切られた。
読んでいると、少々ご都合主義的な展開が現れるのだけれども、それが逆に、裏に何かあるのではないかという疑心暗鬼を呼び起こす結果となり、まあ、最終的には主人公がかなり幸運すぎるという点もあるのだけれども、読んでいるうちは楽しいのだ。
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